はじめに
児童相談所は、児童虐待への対応だけを担う機関ではありません。児童福祉司や児童心理司を中心に、医師、保健師、弁護士、警察・教員経験者、市町村業務経験者など、さまざまな職種が関わっています。
こども家庭庁が公表した「児童相談所関連データ」によると、令和8年4月1日現在、全国の児童相談所は243か所です。前年から3か所増え、一時保護施設も165か所となりました。(児童相談所関連データ-p.1)
本記事では、同資料をもとに、児童相談所の設置状況、職員配置、専門職の活用、介入と支援の分担、民間団体への業務委託の状況を整理します。
※本記事の数値は、特に記載がない限り令和8年4月1日現在のものです。
※児童福祉司の人数は、資料上の定義により任用予定者などを含む場合があります。
児童相談所は243か所。一時保護施設は165か所
令和8年4月1日現在、全国の児童相談所は243か所です。令和7年4月1日時点の240か所から、3か所増加しました。(令和8年度(R8.4.1現在)令和7年度(R7.4.1現在)-p.3)
一時保護施設は165か所で、前年の159か所から6か所増えています。支所を有する児童相談所は21か所、支所数は25か所で、いずれも前年から増減はありません。(一時保護所施設を設置する児童相談所-p.4)
| 項目 | 令和8年4月1日現在 | 令和7年4月1日現在 | 増減 |
| 児童相談所 | 243か所 | 240か所 | 3か所増 |
| 支所を有する児童相談所 | 21か所 | 21か所 | 増減なし |
| 支所 | 25か所 | 25か所 | 増減なし |
| 一時保護施設 | 165か所 | 159か所 | 6か所増 |
令和8年4月1日現在の児童相談所数には、令和7年10月に開所した高崎市と、令和8年4月に開所した尼崎市が含まれています。(児童相談所-p.7)
資料には、都道府県、政令指定都市、児童相談所設置市を合わせた84自治体について、児童相談所の名称、郵便番号、所在地、電話番号も掲載されています。相談先を確認する場合は、記事末尾の出典にある全国児童相談所一覧を参照できます。(児童相談所-p.2)
児童福祉司は7,175人、児童心理司は3,247人
児童福祉司は、任用予定者を含めて7,175人です。前年の6,866人から309人増加しました。
任用予定者を含まない児童福祉司の配置員数は6,882人です。児童心理司は3,247人で、前年の3,167人から80人増加しました。(児童福祉司、児童心理司の配置状況について(令和8年4月1日現在)-p.8)
| 職種 | 令和8年4月1日現在 | 令和7年4月1日現在 | 対前年増減 |
| 児童福祉司 | 7,175人 | 6,866人 | 309人増 |
| 児童心理司 | 3,247人 | 3,167人 | 80人増 |
自治体別に見ると、児童福祉司の配置員数は東京都が520人、千葉県が344人、大阪府が321人、埼玉県が291人となっています。
児童心理司は、東京都が257人、千葉県が195人、埼玉県が139人、横浜市が110人でした。(児童福祉司、児童心理司の配置状況について(令和8年4月1日現在)-p.8)
ただし、自治体によって管轄人口、児童相談所の数、地域面積などが異なります。配置人数の多さだけで、体制の充実度を単純に比較することはできません。
任用区分では、社会福祉士に該当する区分が50.0%
児童福祉司には、児童福祉法に基づく複数の任用区分があります。資料では、医師、社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師、心理学・教育学・社会学を学んだ人、相談援助業務の経験者などが区分されています。(児童福祉司任用区分一覧(令和8年4月1日現在)-p.9)(児童福祉法第-pp.10-11)
令和8年4月1日現在、任用区分上、**5号に該当する社会福祉士は3,586人で、全体の50.0%**を占めています。
| 任用区分 | 人数 | 割合 |
| 1号 | 21人 | 0.3% |
| 2号 | 758人 | 10.6% |
| 3号 | 1,263人 | 17.6% |
| 4号 | 12人 | 0.2% |
| 5号 | 3,586人 | 50.0% |
| 6号 | 196人 | 2.7% |
| 7号 | 244人 | 3.4% |
| 8号 | 487人 | 6.8% |
| 9号 | 608人 | 8.5% |
| 合計 | 7,175人 | 100% |
1号には、一定の講習、試験、登録などの要件を満たした「こども家庭ソーシャルワーカー」が位置付けられています。(児童福祉法第-pp.10-11)
任用区分の内訳からは、児童福祉司が単一の資格だけで構成されているのではなく、福祉、心理、教育、医療、相談援助など、複数の専門性を持つ人材によって構成されていることが分かります。
スーパーバイザーは1,270人
児童福祉司の指導・教育を担うスーパーバイザーは、令和8年4月1日現在で1,270人です。前年の1,211人から59人増加しました。(スーパーバイザー(指導教育担当児童福祉司)の配置状況について-p.14)
児童福祉司の勤務年数を見ると、1年未満が約18%、1~3年が約29%で、3年未満の職員が合わせて約47%を占めています。
| 勤務年数 | 児童福祉司 | 児童心理司 |
| 1年未満 | 約18% | 約15% |
| 1~3年 | 約29% | 約27% |
| 3~5年 | 約19% | 約21% |
| 5~10年 | 約22% | 約23% |
| 10年以上 | 約12% | 約14% |
一方で、10年以上の勤務経験を持つ職員も、児童福祉司で約12%、児童心理司で約14%います。(児童福祉司、児童心理司の勤務年数について(令和8年4月1日現在)-p.12)
職員数だけでなく、経験の浅い職員をどのように指導し、組織として知識やノウハウを継承するかも重要です。今回の資料では、スーパーバイザーの配置人数が前年より増加したことが示されています。
※勤務年数の集計対象や職員の範囲は、資料の注記に基づきます。過年度との単純比較には注意が必要です。
里親支援・市町村支援を担う児童福祉司
児童相談所では、虐待への緊急対応だけでなく、里親制度の活用や市町村との連携を担う職員も配置されています。
| 職種 | 令和8年4月1日現在 | 令和7年4月1日現在 | 増減 |
| 里親養育支援児童福祉司 | 315人 | 304人 | 11人増 |
| 市町村支援児童福祉司 | 114人 | 108人 | 6人増 |
里親養育支援児童福祉司は、千葉県17人、東京都15人、大阪府14人、愛知県13人などです。(里親養育支援児童福祉司及び市町村支援児童福祉司の配置状況について(令和8年4月1日現在)-p.15)
市町村支援児童福祉司は、埼玉県と大阪府でそれぞれ8人配置されています。一方、自治体によっては配置人数が少ない、または配置されていないところもあります。(里親養育支援児童福祉司及び市町村支援児童福祉司の配置状況について(令和8年4月1日現在)-p.15)
このデータからは、児童相談所が個別ケースへの対応だけでなく、里親委託や市町村との連携にも関わっていることが分かります。
医師・保健師も配置
児童相談所には、福祉職や心理職以外の専門職も配置されています。
- 医師:829人
- 保健師:321人
医師は前年の806人から23人、保健師は前年の312人から9人増加しました。(医師及び保健師の配置状況について(令和8年4月1日現在)-p.16)
なお、資料では、令和8年4月1日現在の医師の配置員数に資格保有者を含むとしています。人数の定義には注意が必要です。(医師及び保健師の配置状況について(令和8年4月1日現在)-p.16)
全243か所で弁護士を活用できる体制
弁護士については、全国243か所すべての児童相談所で、何らかの形で活用できる体制が整っているとされています。(児童相談所における弁護士の活用状況等(令和8年4月1日現在)-p.17)
| 活用方法 | 児童相談所数 | 人数 |
| 常勤職員 | 19か所 | 22人 |
| 非常勤職員 | 111か所 | 205人 |
| 弁護士事務所との契約など | 98か所 | 資料に記載なし |
ここでいう「全243か所で活用できる体制」とは、すべての児童相談所に常勤弁護士がいるという意味ではありません。常勤、非常勤、弁護士事務所との契約など、活用方法は児童相談所によって異なります。
また、常勤・非常勤の弁護士を配置していない児童相談所でも、弁護士配置に準じる措置が取られています。
※常勤・非常勤・契約などの複数に該当する児童相談所は、それぞれに計上されています。
※弁護士事務所との契約などは、資料に人数の記載がありません。
警察・教員・市町村業務の経験者も配置
児童相談所には、警察や教育、市町村行政の経験者も配置されています。(児童相談所における警察職員、教員、市町村業務経験者等の配置状況(令和8年4月1日現在)-p.17)
- 警察職員:110人
- 警察OB:268人
- 教員:132人
- 教員OB:155人
- 市町村業務経験者:295人
自治体によって配置状況には差があります。これらの職員が、児童相談所内でどのような業務を担当しているかは自治体ごとに異なりますが、福祉、心理、医療、法律、教育、警察、市町村行政など、複数分野の人材が配置されていることが分かります。
緊急介入とその後の支援を分担する児童相談所は約4分の3
児童相談所では、緊急介入を担当する職員と、その後の保護者支援などを担当する職員を分ける運用も行われています。(児童相談所における介入機能と支援機能の分離状況-p.19)
243か所の内訳は次のとおりです。
| 対応方法 | 児童相談所数 | 割合 |
| 別部署で担当を分けている | 80か所 | 32.9% |
| 同一部署内で担当を分けている | 74か所 | 30.5% |
| 事例によって担当を分けている | 28か所 | 11.5% |
| 同一の担当が行っている | 47か所 | 19.3% |
| その他 | 14か所 | 5.8% |
| 合計 | 243か所 | 100% |
別部署、同一部署内、事例による分担を合わせると、担当を分けている児童相談所は182か所で、全体の約74.9%です。
一方で、同じ担当者が緊急介入からその後の支援まで継続して行う児童相談所も47か所あります。全国で一つの方式に統一されているのではなく、自治体や事例に応じて複数の運用方法が採用されています。
84自治体のうち82自治体が業務の一部を民間委託
児童相談所の運営では、民間団体などとの連携も行われています。
児童相談所を設置する84自治体のうち、**82自治体、97.6%**が、業務の一部を民間団体などに委託しています。(児童相談所業務の民間団体等への委託状況(令和8年4月1日現在)-p.20)
委託業務は複数回答で、全320件でした。資料に掲載された主な委託業務は次のとおりです。
| 委託業務 | 件数 | 割合 |
| 一時保護施設の運営 | 53件 | 16.6% |
| 里親委託に関する業務 | 51件 | 15.9% |
| 受付業務(「189」などの電話受付・窓口対応) | 39件 | 12.2% |
| 家族再統合事業や保護者支援プログラム | 27件 | 8.4% |
| 研修講師 | 23件 | 7.2% |
| 夜間などの窓口対応 | 19件 | 5.9% |
| 養子縁組に関する業務 | 17件 | 5.3% |
| 施設入所措置解除後の相談・支援 | 17件 | 5.3% |
| 研修企画・調整 | 17件 | 5.3% |
| 相談対応業務 | 15件 | 4.7% |
委託の対象は、一時保護施設の運営や受付業務だけではありません。里親委託、家族再統合、保護者支援、養子縁組、職員研修など、幅広い業務が含まれています。
ただし、これは児童相談所の業務全体を民間団体に任せているという意味ではありません。自治体ごとに委託の範囲や内容は異なり、あくまで業務の一部を外部団体などが担っている状況です。
※委託業務は複数回答です。
※原資料の委託業務一覧には、同じ項目名が重複して掲載されています。集計の扱いについては、こども家庭庁による訂正版などを確認したうえで掲載してください。(児童相談所業務の民間団体等への委託状況(令和8年4月1日現在)-p.20)
まとめ
令和8年4月1日現在の児童相談所関連データからは、次の点が読み取れます。
- 児童相談所は全国243か所で、前年から3か所増加した
- 一時保護施設は165か所で、前年から6か所増加した
- 児童福祉司は7,175人、児童心理司は3,247人だった
- スーパーバイザーは1,270人で、前年から59人増加した
- 医師、保健師、弁護士、警察・教員経験者、市町村業務経験者なども配置されている
- 緊急介入とその後の支援を分担する児童相談所は182か所、全体の約74.9%だった
- 84自治体のうち82自治体が、児童相談所業務の一部を民間団体などに委託している
児童相談所の体制は、施設数や職員数だけでなく、専門職の配置、スーパーバイザーによる指導、里親・市町村との連携、民間団体との役割分担によって構成されています。
ただし、職員数や施設数の増加だけで、対応力や支援の成果を判断することはできません。相談件数、職員1人あたりの業務量、採用・定着状況、一時保護施設の利用状況などと合わせて見る必要があります。
全国の児童相談所の名称、所在地、電話番号については、こども家庭庁が公表する「全国児童相談所一覧」を確認できます。(全国児童相談所一覧(令和8年4月1日現在)-p.3)

